2009年1月29日木曜日

ひらく会議アンケート 伊藤亜紗さん

1)3つの言葉について質問します。一般的なイメージや印象や共通認識のことは一度忘れて、個人的にどういうことだと感じるか、あるいはその言葉の印象あるいは違和感などをお書き下さい。

Q あなたにとって「ダンス」とはなんですか?

他人の時間をうばうこと。

一定時間のあいだひとを監禁する、というフォーマットの可能性をさまざまさぐることがダンスではないかと思います。監禁するというのは、観客(監禁された側)からすれば時間を銀行に預けたような感覚なので、「やられた!」にせよ「うっとり」にせよ、ちゃんと奪わたいと思って観に行きます。

Q あなたにとって「コンテンポラリー」とはなんですか?

AとBが接続されないままただそこにある状態をゆるすぬるさが「コンテンポラリー」という言葉にはあり、それゆえあまりいい言葉ではないとおもっています。ほんとうに今という時代をテーマにしようとおもったら、AとBのあいだのまだ引かれていない線を引く作業が核になるはずで、最終的なアウトプットの形態がダンスであれ小説であれ映画であれ、そこになくてはならないのは編集的な欲望だとおもいます。

Q 「AとBのあいだにまだ引かれてない線を引く」というのは、例えばどういったことですか?もし具体的な例があったら、教えていただきたいと思います。もうすこし実感できる気がします.


たとえばチェルフィッチュの「エンジョイ」は「漫画喫茶で働いていること」と「ホームレスになること」ということのあいだに線を引いていたとおもいます。「漫画喫茶で働くこと」に自分の生活を重ねることは容易だったので、この接続はかなりドキッとしました。ということは、「線を引く」ことの目的は、観客の想像力に介入することなのだと思います。



Q あなたにとって「コミュニティー」とはなんですか?

共同作業をしない共同体。ファンクラブ。

そもそも何かのファンになったことがないので、コミュニティーの感覚はあまりしっくりきません。ひとつの目標を共有しつつ各人がしたたかに自分の能力を発揮している「バンド」や「チーム」の方が自分の活動のスタイルにはあっているように思います。




2) あなたにとって、ダンス活動をするモチベーションの根源となっているものごとはなんですか?結論ではなくても、問いのままでも良いのでお答え下さい。

ダンス活動というか批評・編集活動についてのモチベーションは、現象に介入して誤読の種をひきだしてくることです。
作品を見て思ってしまったことを、仮説かもしれないけどちゃんと形にしてみることによって、それを読んだ誰かがまた勝手に「なるほど!」と彼の文脈に引き寄せて何かを獲得する。そういう建設と変形の連鎖を発動させることです。

Q どんな時にそのモチベーションが湧きますか?あるいは萎えますか?

モチベーションが湧くのはもちろんすごい作品をみたときです。すごい作品をみると自分の基準がゆらぐので言葉にして整理したくなります。
萎えるのは、雑誌運営的には、広告がとれない等経済的な条件によって活動を制限されるときです。

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